なぜか、溺愛される1日を繰り返しています。
☆☆☆

「長谷川さん。この書類を鈴木先生のところへ持っていってくれない?」


出勤してすぐの仕事に思わず顔が硬直する。
5月15日を経験するのはこれで4回目になる。

けれど1日1日は微妙に相違点があり、すべてがすべて同じというわけではなかった。
たとえば舞が朝の朝食のパンをご飯に変えるだけで、一見なにも関係ないと思える部分が少しだけ変化する。

もちろんその些細な変化のせいで最初の5月15日と大きなズレが生じるわけではない。
ただ、すべてのものは総じてなにかに通じている。

ということは舞は身を持って感じていた。
ただ、それだけだったのだけれど……。

看護師長に差し出された書類に視線を落として硬直している舞は、『昨日まではこんな業務はなかったのに』と思っていた。


「長谷川さん、聞いてる?」

「あ、はい! 聞いています」


看護師長のメガネの奥の目が怒りで釣り上がる前に慌てて手を伸ばして書類を受け取る。
受け取った瞬間、これで聡に会いにいかなければならなくなったと、ひどく後悔した。


「じゃ、よろしくね」


そう言って忙しそうに去っていく看護師長の背中を見送って、舞は大きくため息を吐き出したのだった。
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