なぜか、溺愛される1日を繰り返しています。
浮気しているなら、そのままふたりで遊びに行っても良さそうなものなのに。


「もしかしてなんだけどさ」


チカゲが彩に向き直る。
彩は小さくなっている知明からチカゲへ視線を戻した。


「なに?」

「6月10日に大学の講義室Aを覗いた?」


その質問にドキリとする。
その日、その場所はまさしく彩がふたりを目撃したところだったからだ。

ふたりは誰もいない講義室で隣り合って座り、なにやらささやきあっている、ように見えた。
そのときに知明の目が見たこともないくらい輝いていたのは事実だ。


「覗いたけど?」


ムッと目を吊り上げてチカゲを見つめる。
これは本当に戦闘態勢に入ったほうがいいかもしれない。

チカゲは知明へ振り返ると「ほらね」と短く言った。
知明は大きな体を無理やり小さくしようとかなりの猫背になっている。
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