スロウモーション・ラブ
心の奥に秘めていた恋だから、告白するほど強くはない気持ちだと思っていた。
もし伝えたら振られるだろうとわかっているから、大きなダメージは負わないと思っていた。
だけど、予想以上に日常が苦しい。
失恋は、現実のかたちをぼんやりとさせた。
ここにいる自分がどこか遠い。心の底から笑えない。
ふとした時に、胸がぎゅっと痛くなる。
頑張れたと言えない恋だから余計に痛くなるのかもしれない。自分の情けなさに嫌気がさす。
こうした思考を繰り返しながら、気付けば季節は梅雨の真っ只中にいた。
「はなび」
りくに呼ばれて「うん」と気のない返事をする。
りくが女子からの攻撃を受けないようにと続けてきたバカップル作戦は継続中。
だけど、上手くできているかは自信がない。
(先輩には見抜かれていたわけだし)
そこまで考えたところでぎゅっと胸が苦しくなった。
「最近元気ない?」
りくが隣を歩きながら訊ねる。
隣を見上げることなく「ううん」と答えると、静かに次の言葉が飛んできた。
「うわの空だし」
「……そうかな」
わかってしまうだろうな、と思いながらも自分の矜恃が強がらせる。
思えば、りく相手に私の恋の話はしたことがない。
なんとなく話しづらくて黙っていると、りくが突然私の前に回り込む。