スロウモーション・ラブ
お盆を過ぎ、夏休みも残り2週間を切った頃。
友達と遊んだ帰りに近くの駄菓子屋の前を通ると小学生に混じる高1のイケメンと遭遇した。
「あ、はなび」
「何してんの」
その手には大量の駄菓子が入った袋。
「今いとこ来てて、家にいるとうるさいから連れてきた」
りくは「ようた」と一人の少年に声をかける。
「いとこのようた。小1」
昔のりくにどことなく似ている少年は、じーっと私の顔を見る。
「ようたくん、こんにちは。りくの友だちではなびっていいます」
すると、ようたくんは「あ!」と声を上げてニカッと笑う。
「りく兄の彼女!」
「ち、ちがうよ!?」
彼女発言に驚き大きな声を出してしまい慌てて口元を押さえる。
すると、ようたくんはキョトンとしながら、首を傾げた。
「昨日りく兄の彼女、はなびって名前だって」
「いや、それはその、彼女になる予定ってことで決して見栄じゃ……」
しどろもどろに答えるりくをじとっと見ると、そーっと目を逸らされた。
小学生相手に見栄を張ってしまったイケメンに呆れるより愛しさに似たものが湧き上がるのだから、私も大概だとは思う。
ようたくんはりくの答えがしっくり来ていないようで、はてなを頭の上に浮かべながら再度聞く。
「りく兄の彼女じゃないってこと?」
「うっ……」
りくが一瞬出したうめき声につい笑ってしまった。
ようたくんは私たちの様子を交互に見ると、あどけない顔でピュアな質問を投げかけた。
「りく兄の好きな人?」
今まさにホットなワードに今度は私が慌てる番だった。りくが私の顔を見て、困りながら笑う。
「……えっと、答えていいんだっけ?」
ここで聞いてしまえば待ってもらっている意味がないけれど、純粋な質問にはぐらかすのも良心が痛み……。
「わ、私何か買ってくるから話してて」
逃げるように店の奥へと足を進めたのだった。