スロウモーション・ラブ
「あ……」
いざ落ちてしまえばどう伝えたらいいのか迷う。
勇気を搾り出そうとしていると、りくの手が私の手に重なった。
「俺はもう待たなくていい?」
ごくりと息を飲む。早く言ってしまえと心が急く。
「俺の気のせいだったらまだ待つけど……でも、最近そんな気が、してる」
りくの瞳が真っ直ぐに私の瞳を見つめる。
心音が私の身体を駆り立て、ようやく唇が動く。
「き、気のせいじゃ」
最初の「き」で声が裏返ってしまい、なんだか格好がつかない。
私の言葉を待つりくへ、今度は少し声を落ち着けて告げた。
「気のせいじゃ、ない」
一瞬の沈黙の後、りくが私の手首を掴む。
まるで逃がさないとでも言うように。
(逃げないのに……)
りくの表情が崩れる。潤んだ瞳は、喜びとか安堵とかそんなものが溢れているように見えた。
「俺は、ずっと前からはなびが好き」
「……りく、」
いざ気持ちを伝えようと口を開くとりくの声が被さる。
「はなび、好きだよ。めちゃくちゃ好き」
気持ちの込められた言葉はきつく私の心を掴んだ。
だから、溢れ出すように口からこぼれた。
「…………すき」
何故だか、瞳が熱くなる。
両思いだというのに胸がどこか痛くて。
「りくが、好き」
声に出して初めて、こんなにも想いが大きくなっていたことに気付いた。
この気持ちは軽くなくて、ちゃんと本物なのだと言える。
「……っ、うん……」
りくの頬を伝う透明の雫を見てきゅんと心が確かに鳴いた。
「はなび、本物の彼女になってくれる?」
幼なじみと恋をすることに恐怖心がないわけじゃない。けれど、それ以上に、手を伸ばしたい。
「……彼女に、なりたい」