【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
1.大聖女、お払い箱となる
とある王国にある城の一室……その前で。
『……あん。くすぐったいですわギーツ様。でも、気持ちいい……』
『ふふ、私に尽くさせようとするなんていけない女だ、君は……』
中から響く甘ったるいねだり声と嬉しそうに従う男の声を、そこへ到着したばかりの私はげんなりとして聞いていた。
(……本当に、馬鹿馬鹿しいったら)
溜息一つ。その後私は部屋に踏み込もうと、静かに扉を叩く。
「王太子様。エルシア・アズリット……お招きに預かり参りました」
「――っ……! は、入れ」
扉を開け恭しくお辞儀をすると、中に居たのは慌てて身体を離す一対の男女。
やや乱れた服装、上気した顔からも人を呼び付けておいたくせに睦み合っていたのは明白で、今更こんな仕草をしたって白々しいことこの上ない。
そんな彼らが、これからどんな話を持ち出すのか予想するのは容易く。
なので、私は口に出す言葉を大体決めていた。
『……あん。くすぐったいですわギーツ様。でも、気持ちいい……』
『ふふ、私に尽くさせようとするなんていけない女だ、君は……』
中から響く甘ったるいねだり声と嬉しそうに従う男の声を、そこへ到着したばかりの私はげんなりとして聞いていた。
(……本当に、馬鹿馬鹿しいったら)
溜息一つ。その後私は部屋に踏み込もうと、静かに扉を叩く。
「王太子様。エルシア・アズリット……お招きに預かり参りました」
「――っ……! は、入れ」
扉を開け恭しくお辞儀をすると、中に居たのは慌てて身体を離す一対の男女。
やや乱れた服装、上気した顔からも人を呼び付けておいたくせに睦み合っていたのは明白で、今更こんな仕草をしたって白々しいことこの上ない。
そんな彼らが、これからどんな話を持ち出すのか予想するのは容易く。
なので、私は口に出す言葉を大体決めていた。