【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

2.元大聖女、都を発つ

「エルシア様! 大聖女の任を解かれたって本当ですか!?」

 数週間後。残務処理を終え、大聖堂の責任者――マルケット大教皇に本日付で退任するご挨拶をした後のこと。

 振り返れば見上げるほどの白壁の大きな建造物――大聖堂の入り口から去る私を追ってきたのは、後輩の聖女たちだった。

 代表で話しかけてきたのはその顔に悲しみを湛えたプリュムという少女だ。
 黒いロングヘアで、真面目そうな眼鏡をかけた彼女のその言葉には、私の顔も思わず苦笑いになる。

「ごめんね。ちょっと王太子様との間で色々あって、降ろされてしまったのよ。このままこの場所に残るのもなんだかね……気分がよくないし」
「わかりますよ、エルシア様はあんなに頑張ってくださっていましたし。あなたが大聖女になって下さってから皆安心して仕事ができるってとても喜んでいたのに。どうしてこんなことに……」

 妹経由か王太子経由か知らないが、もう婚約破棄の噂が広がっている。
 そうでなくても、王族からの婚約破棄と更迭だ。私側に問題があったと取られても仕方のない状況。

 でも後輩の若い聖女たちは、流石に今まで忙しく働く私の姿を見ていたから、納得のいかないこの気持ちにひどく同意してくれた。
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