【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

13.元大聖女、王女様と出会う

「ここには身分の高い者もいるのでな。くれぐれも粗相はするなよ」

 注意するとベッカーは王宮に併設された、白い建物に足を踏み入れた。
 宮内医療棟――どうやらここが宮廷医師である彼の職場であるようだ。

「おや、ベッカー医師長。もしかして、お隣りにいるのは噂の聖女様ですか? お会いできて光栄です」
「あはは、こんにちは。どーもどーも」

 大勢の看護師たちに挨拶されながら奥に進んだ私たちは、問題の患者がいるという大きな扉の前に立った。

「ここがそのミーミル様がいらっしゃる特別室だ。言葉遣いに注意せよ」
「大丈夫。謁見で少し慣れたから」

 私がそう言うと彼は一つ頷き、ノックの後扉が開くのを待つ。ひとりの侍女が私たちを迎え入れると、部屋の大きなベッドの中央には十歳くらいの少女がぼんやりと座っている。

「ミーミル様、失礼いたします。お加減はいかがですか?」
「ベッカー……? まだね、ちょっと気分が悪いの」
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