【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 ベッカーに尋ねられ、ミーミル王女はふるふると首を振った。
 王妃の面影が見える、黒髪の可愛らしい少女だ。だが、熱に浮かされたような表情でぐったりしている姿は大変痛ましいものがある。

 彼女の美しい紫の瞳がおずおずとこちらに向いた。

「その人は?」
「この者は、ミーミル様を診てもらうために連れてきたのですよ。セーウェルトの聖女という存在に聞き覚えは有りますかな?」
「セーウェルト……っ人間なの!? やだ、怖い!」
(えぇ~……? ショック~)

 セーウェルト――その言葉を聞いたミーミル様は素早くベッカーにしがみ付くと、ぶるぶると震えた。いくら敵対国の人間だとはいえ、幼女にそんな反応をされるとがっかりする。

 そしてベッカーは彼らしくなく、彼女を柔らかく諭す。
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