【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 小さな手でひとしきり私の手をまさぐった後、立ち上がって今度は顔をぺたぺた触る。それがくすぐったくて、私は笑いを堪えるのに苦労する。

「本当に何もしないの?」
「どうして、何かされると思われるのですか?」
「だって、昔のご本に書いてあったのよ。人間は私たちをはく害した、悪者なんだって。それに……」

 何か嫌な出来事でもあったのか、ミーミル王女は言葉を詰めた。

「それは……大昔の事よね? ベッカー」
「ああ、そうだな。彼女が優秀な医者であることは、このベッカーが保証しましょう。ですから安心していただいて大丈夫ですよ」
「うん」

 誤解を解きたい私の言葉にベッカーも同意してくれ、それで納得したのか王女は大人しくその場に座り込む。そこを逃さず私は彼女の診察を始めた。
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