【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 確かに私がここに来てから、殿下が一日を通してこの城に居ることはほとんどなかったような気がする。もしかしたら国中を回って、人知れず国民の為に働いているのかもね。

「エルシア、もしあの子が弱音を吐くことがあったら、支えてあげてくれないかしら。私たちではそれが出来ないのよ……」
「殿下がですか? もちろんです。私にできることであれば」

 殿下にはあわや野盗に攫われるところを助けて頂いたし、ここに置いて頂いている恩もあるのでもし彼に辛いことがあるなら出来る限り力にはなるつもりだ。

 でも、いつも余裕のあるあの殿下が苦しんでいるところなんて、なんとも想像しにくいんだけど……。
 
 疑問符を浮かべた私に陛下と王妃はなんとも言えない表情で顔を見合わせ、そのまま朝食の席はお開きとなった。

 結局王妃からの提案で、王宮の衣装部屋にある衣服や装飾品をどれでも頂いて構わないと言われた私は頭を下げつつ、殿下とミーミル様のことでどうも消化不良のような気持ちを抱えたまま、その場所を後にする。

 ふとあの陰険なリリカの顔が浮かんだ。自分だって妹とろくな関係性を築けていなかったのだ。こんな私が心配するのもおこがましい話だよね……きっと。
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