【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 つまりここ、アズリット伯爵家は今非常に豊かな財政状況にあるのだ。
 なので家に帰った私を迎えた父と母の顔は、非常に明るいものだった。

「いやぁ、私もあんなことになっているとは思いもよらなかったなぁ。まさかリリカが王太子殿と仲を深めているとは……。まぁ、妹がお前の任を継いでくれるのだから、うちとしてはさしたる影響はない。問題無しだ、わっはっは」
「そうなのよぉエル。おまけにお金も沢山頂けたから、この先三代は遊んで暮らせると思うわ。何か欲しいものがあったら遠慮なく言いなさい、何でも買ってあげるわ」
(軽いなぁ……)

 彼女たちの懐に入っているのは、先程挙げたものや、私が大聖女として必死に務めて国家から頂いた報奨金であるはずなのだが……それはまあ、面倒臭いので口にすまい。

 こういうのを、情が薄いというのだろうか。
 悪人では無いのだが善人でもなく、あんまり他人の気持ちをわかってくれない人たち。それが私が父と母に抱く印象だ。とはいえ私も、両親やリリカに取りたてて強い愛情を抱いているわけでもなく、そこはお互い様と言えるのかも。

 彼らと真面目に話そうと思っても、会話が永遠に平行線となって交わらない気がするので、早々(はやばや)と会話を切り上げてしまおう。
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