【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「いったい何が危険なの?」
「あの樹木は別名溶岩樹と言ってな。地中にとんでもなく長い根を伸ばし、そこから溶岩を吸い上げて成長するのだ。樹木自体も強い熱を発し、触れるものをすべて高温で燃やしてしまう。竜木という通称はその姿が、火炎を撒き散らす竜の姿に例えられたからだという」

 よく見れば温室の上部は解放され、内部も陽炎に揺らいでいて暑そうだ。
 ローエンさんも残念そうな顔で告げた。

「あの植物のせいで幾つもの森林で火災が起き、貴重な生態系が破壊されてしまいました。けれど一方でうまく処理すれば貴重な薬品にもなるのです。ここにも色々な資料がありますし、後でお見せしましょう。僕の知ってることならなんでもお教えしますよ」
「本当ですか!?」
「ええ、この間はベッカーさんから貴重なサンプルもいただきましたし。陽炎草のね」

 片目を瞑ったローエンさんの姿を見て私は思い出す。
 そういえば大分前、ベッカーに私は手持ち分の陽炎草の乾燥葉と種を全部渡してあげていたのだ。またこちらの国で焦熱病の患者が出た時に役立てて欲しいと願って。
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