【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 本当は、セーウェルト王国の法律ではこれらを国外に持ち出すのは禁止とされているんだけど……。でも、殿下から聞いた話によると、セーウェルト側はそれをいいことに、陛下が焦熱病で臥せった際、陽炎草を送る代わりにジュデットの領土のいくつかを引き渡すよう要求して来たんだって。

 そして病床の陛下はそれを拒んだ。きっと自分が命を落とそうと、ジュデットの国民の権利を守る覚悟だったんだろう。挙げ句の果てに交渉はこじれ、両国の関係性は大幅に悪化してしまった。

 そんな話を聞くとさすがに私もセーウェルト側に正当性があるとは思えない。
 だから罪滅ぼしのつもりで陽炎草と薬の精製法を委ねたのだ。
 ローエンさんはその話を聞いてひどく感激してくれたらしく、握りこぶしを作って力説する。

「エルシアさんは素晴らしい決断をなさいました! おかげでこの国は大変なことにならずに済んだのです。ベッカーさん、ちゃんとエルシアさんを丁重に扱ってあげてくれてますか? 彼女はここジュデットにとって、国賓として扱うべき人材です。無理に働かせたりしていないでしょうね?」
「わかっている。仕事を頼む際にもちゃんと適切な休みを与え、十分な給金も支払っている。それに、こやつが喜びそうに思ったからここに連れて来てやったのではないか」
「そうですか? ならいいです」
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