【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「だがなローエン。この先エルシアのような人間がここ来てくれる保証はない。手持ちの薬だって永久に保存できるわけではないのだ。将来のことも含め、できる限りこの国の国益に適うように行動する。それがここで仕える我らの務めではないのか?」

 真剣な目で問うベッカーに、ローエンさんは小さく呟いた。

「それだけではないでしょう? あなたは……」
「いいや、あのことは関係ない。あくまでこの国を慮っての事だ」
「ですが――」

 深刻になりそうな雰囲気の中、話し合いを続けようとするふたり。
 何らかの事情がありそうだけど、ここで諍いを起こされても私が困る。
 よって強引に二人の間に身体を挟んだ。

「まあまあまあ。そこまで言うなら教えようじゃありませんか」
「いいのか!?」

 ベッカーがガッと食い付き、ローエンさんの拍子抜けした声が後を追う。
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