【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「それでお父様、お母様。私しばらく見聞を広めるために各地を回りたいと思っていまして……。しばらくこの家を留守にする許可を頂けますか?」
「ふむ? いいのか? お前あての縁談がごまんと来ておるのだぞ? それなんかどうだ、良い家柄の息子だぞう?」

 父は机の上にどさどさと紙束を出してきた。百枚以上ありそう。

 そういえば、先日の件で私は婚約を破棄された傷ものとなった。
 されど恐らくこれらの求婚は取り下げられることはない。なぜならば、これは私個人への評価ではなく、あくまで聖女の血を引いているという事実に対しての評価であるからだ。

 聖女の血を引く人間を家に迎えたいと思う貴族家はいくらでもある。

 もし聖女として優れた資質を持つ人間が家に生まれれば、国から大きく重用される。そして万一大聖女の任に就ければ、王太子や大貴族との結婚もあり得るのだ。婚約を求める側からすれば宝くじを買い求めるような気分なのだろう。

 だが今のところ私にその気はない。
 激務から解放されて、とりあえずしばらくはゆったりとした生活を楽しみ、心を休めたい。それが第一の希望なのだ。結婚の話とか、しばらくは聞きたくもない。
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