【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「後は毎日の水やりを欠かさなければ順調に育っていくはずですよ。週に一度聖女の力を与えに来る必要はありますけど、それは私がやりますから。代わりにここで作られる薬の製法なんかを見せてもらってもいいですか?」
「そんなのいくらでも教えますよ! まさかこの手で陽炎草の世話ができるなんて……どこに、どこに置こう!」

 興奮気味のローエンさんは両手で鉢植えを大事そうに抱えると、日当たりのいい場所を探しに行く。それを見つめ、ベッカーは安心した表情を見せた。

「ついに我が国でも、陽炎草の姿が見られるようになるのだな」
「期間限定だけどね」

 あくまで私がここに居る間だけだけど、彼らの心配を少しでも取り除いてあげることが出来てよかった。私が居なくなれば、ここで育てた陽炎草は萎れてしまうけれど、あまり大っぴらに育てセーウェルトとの問題に発展することを考えれば、そのくらいが丁度いい。

 それよりも今はジュデット固有の草花について知識を深めたい。
 この薬草園のよく分からない草花たちから何の薬ができるのか。それを想像するだけでわくわくしてしまう。
< 152 / 471 >

この作品をシェア

pagetop