【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「お父様には申し訳ないのですが、私もこの心の傷を埋めるため、誰も見知らぬ者のいない土地で静かに過ごしたい気分なのです」

 よよと泣き真似をして見せると、父と母は顔を見合わせ頷いてくれた。

「ならば仕方あるまい。しかし定期的に連絡だけはするようにな」
「まあエルならしっかりしているし、よっぽどのことがなければ大丈夫でしょう。もしかしたら旅先でいい人でも捕まえて来るかも知れないわね。頑張りなさいな……ほっほっほ」

 といった感じで、まるで他人事の両親たち。

 手のかかる妹に注力していたせいで、半放置で育てた私に対する彼らの関心は薄く、だから私の方もあんまりこの人たちに親という実感が持てないでいるのだろう。

 きっと……私が失踪しても仕方ないで済ませてしまうんだろうな、この人たちは。

「では明朝、家を発つことにいたします。父上も母上もどうか、お変わりなきよう」

 これ以上話しているとそんな愚痴っぽい考えばっかり浮かんできそうになるので、私は一礼し、さっさと応接間を後にする。
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