【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「やあ、エルシア」
「あ、殿下! お久しぶりです」
「悪かった。仕事が忙しくて中々会いに来れなくて……でも一段落ついたから、今日からは少し自由に動けると思うんだ。それで、いきなりなんだけどこの後時間は空いてないかな? 街の案内をしたいと思って」
「えっ!? 行きたいです……でも午前中は仕事が有りまして。午後からなら」
「よかった、なら後で迎えに行くから、仕事が終わったら部屋で待っていて」
「わかりました」

 私の待ち望んでいた機会がようやく訪れた。
 やっとこの城から出て、ジュデット国民たちの生活を生で見ることが出来る。
 殿下と別れ、私はニヤニヤする表情を抑えられないまま宮内医療棟へと入っていく。

「皆、こんにちは!」
「おや、今日はご機嫌ですね。エルシアさん」
「調子に乗って不注意で病院の器材を壊したりするなよ」
「分かってますって!」

 そうして私は看護師さんの挨拶やベッカーのお小言を受けながら二割増しの馬力を発揮し、本日も迅速かつ丁寧に医療業務を捌いていくのだった。
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