【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく


 そうしているとすぐに時間は過ぎ、午後となる。

「やあ、お疲れ様」
(うわっとぉ……)

 予定通り宮内医療棟から出た私は、自室の前で待っている殿下を見つけてぎょっとしつつ頭を下げる。ちょっと、この人美人過ぎて心臓に悪いんだけど……。

 いつもと変わらず、光を吸い込んで輝くかのような、艶のある黒髪。目尻がやや吊り上がった、妖しげな魅力を放つ翡翠色の瞳。特徴的な褐色の肌は純白のシャツに包まれ、本日はその上に濃い灰色のコートとスラックスを身に纏う。私と年はそう変わらないと聞いたのに、大人の魅力で一杯だ。思わず声が上擦ってしまった。

「おお、お待たせしてすみません。今仕事が終わったところで」
「いや、私も今来たところだから。女性は色々とあるだろう? 気兼ねせずにゆっくり支度をしてくれていいよ。いくらでも待つから」
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