【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 こんな人々の容姿が雑多なら、変装なんか必要なかったんじゃないの?
 そう思えるくらい、誰もが他人の見た目を気にすることなく、笑い合う国――それが魔族たちの住むジュデットなのだ。

 殿下が私の腕を優しく引きながら言う。

「君の行きたい場所を聞いてなかったよね。何か見たいものはあったりする? 遠慮せずに言ってよ、でないと後で絶対に後悔するから」

 自信満々で言う殿下の表情はこの国が大好きなんだということを強く思わせる。その言葉に私も自然と気になっていた建物などの事を話題に出せた。

「あの真っ赤な煙突の建物が凄く気になってて。何かを作っているんですか? 後、時々王城に妙な楽の音が響いて来るでしょう? その正体が知りたかったんです。糸を弾くような綺麗でちょっと悲しい音のする」
「ああ、リュートのことだね。なら順番にゆっくり街を回りながら案内しようか」
「お願いします! どんどん行きましょう!」

 膨れ上がった知的好奇心は止まらない。
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