【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 というように、頂いた仮の身分を人々に説明してくれたりもして、概ね私は友好的にジュデット国民に受け入れられた。きっといつもの姿だったならこうはいかなかっただろう。ありがとう殿下。

 このまま人混みに揉まれながら移動しなければならないのかと思っていたけど、そんなことはなかった。彼らはマナーよく私たちの進行方向を開け、挨拶が終わるとすぐに散っていく。
 
 気付けば年長者の人たちが率先して邪魔にならないよう声を掛けてくれている。街のそこかしこにいる警邏隊も、しっかり目を光らせてくれているようだ。

「皆さんとてもフレンドリーなのに、気配りが感じられて何だか温かい人が多いですね」
「だろう? 魔族は、いいやつばっかりなんだよ。それをもっと他の国の人にも知ってもらいたいんだけどな……」

 殿下は少し遠い目をした。残念ながらこの街では人間の姿はほとんど見かけない。魔族と私たちが安心して交流できるようになるには、まだしばらくの歳月が掛かりそうだ。
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