【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

「入ってみようか」
「大丈夫なんですか？」
「うん。入り口は販売所と繋がっているから」

　何の販売、というのは入ってみてのお楽しみということらしい。
　煙突と同様に真っ赤な扉を潜って入ったその先を目にし、私は直ちにそこがどういう場所であるのかを理解した。

　棚やテーブルに並ぶのは、目にも涼し気な透明の容器たち。
　そう、この建物は……。

「ガラスだ！　ここは、ガラスの製造所だったんですね……」

　ゆっくりと内部に足を踏み入れる私たち。殿下がそっと、店内にあった青ガラスのグラスを手に取る。

「ジュデットは高品質なガラス細工の生産地として知られていてね。王宮で使われているワイングラスや水差しなんかも、ここで作られているよ。ほら、これがジュデット産の印。医療棟なんかでも、薬瓶とか、研究器材なんかを卸している。綺麗でしょ？」