【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

「本当に私が払わなくていいのかい？」
「はい！　自由な買い物……これぞ旅の醍醐味のひとつでしょう？」
「……そうだな。すまない君、この品々を王宮のこちらの部屋まで送ってあげてくれないか」

　殿下は手際よく店員に指示し、荷物を配達してくれるよう頼んでくれる。割れ物をもって移動するのも大変だもんね。上流階級らしく、大変スマートな行動だ。

　私は料金を支払うと、奥に品物を抱えていこうとする店員から、一つだけあるものを先に受け取った。ほどなくしてお店を後にし、殿下が私に尋ねる。

「何か別に受け取っていたようだけど、特別な物なのかい？」

　その質問に私は意を決し、包み紙から品物を取り出す。

「あの……殿下のような御身分の方には失礼に当たるかもしれませんが、よかったら感謝の印として貰っていただけませんか？」