【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 くっくっと喉を鳴らしつつ、双子の侍女は両側から一房ずつ髪を纏め上げていく。やがて仏頂面の私の頭上には二つの髪玉が乗っかった。



「あ~、エルシア。お団子だ! 触らせて!」
「ミーミル、お食事の後にしましょうね」

 陛下は本日、他国との会談で早くに城を発ったらしく、恒例の朝食の場にいらっしゃらなかった。王妃様とミーミル様の二人だけだ。

 慣れない髪型ですーすーする首筋が心許なく思う私に、ミーミル様を席に戻るようにたしなめつつ王妃様がたおやかに微笑みかけてくる。

「似合っていますよ、エルシア。何か気分の変化でもあったのですか?」
「え、ええ……まあそんなところです」
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