【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 まさか、殿下に見せるために強引に侍女たちに巻き上げられたなどと言えるはずもなく、私はとりあえずお茶で気持ちを落ち着けようとする。

「ところで、昨日クリスと出掛けたそうですが、あの子はちゃんとエスコート出来たのかしら?」
「ぶふぅっ!」

 そこで王妃の悪意のない笑顔からの一言が、私のお腹を急激に圧迫した。
 私の反射神経も中々捨てたものではない。幸い盛大に噴き出した紅茶は瞬時に後ろに向いたおかげで芝生の上に散布されるにとどまる。

「あ、あの、どうしてそれを……?」
「城下の出来事で私の耳に入らないことはないわよ?」
「ええっと……そ、それは、違うんです」

 うふふ、と微笑む王妃様に、しどろもどろになった私は身体の前で手をぶんぶん振った。

「えっ、エルシアはお兄様が好きなの? 趣味悪~い」
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