【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
女を背中に回し、こちらへ向いた男が険しい眼差しで告げる。
「エルシア・アズリット、本日君を呼んだのは理由がある。単刀直入に言うが君との婚約は……破棄させて――」
「……わかりました。では失礼いたします」
男の言葉を遮るように、お辞儀したこちらが丁重に述べるのは辞去の挨拶。
だって、手紙で一文、『大事な話があるから来られたし』とか送りつけておいて、呼び出した用件がそれなんだもの。
例え高貴な身分であろうと、自分の都合で婚約破棄を突き付けるくせに謝罪も無しなんて、無作法にも程がある。文句を呑み込んであげるだけマシだと踵を返した私を、男は鋭い声で引き留めた。
「待て! 最後まで言わせろ。なぜそうもあっさりしている……」
(なぜ? そんなもの、貴方との婚約に対して欠片も価値を感じていないからに決まってるじゃない。縋りついて再考を乞うとでも思っていたのかしら)
こんな状況でもあくまで自分が正しいという姿勢を崩さない男に胸の中で呆れつつも……私は渋々身体を途中で止めて振り返り、冷めた目でその顔を見つめた――。
「エルシア・アズリット、本日君を呼んだのは理由がある。単刀直入に言うが君との婚約は……破棄させて――」
「……わかりました。では失礼いたします」
男の言葉を遮るように、お辞儀したこちらが丁重に述べるのは辞去の挨拶。
だって、手紙で一文、『大事な話があるから来られたし』とか送りつけておいて、呼び出した用件がそれなんだもの。
例え高貴な身分であろうと、自分の都合で婚約破棄を突き付けるくせに謝罪も無しなんて、無作法にも程がある。文句を呑み込んであげるだけマシだと踵を返した私を、男は鋭い声で引き留めた。
「待て! 最後まで言わせろ。なぜそうもあっさりしている……」
(なぜ? そんなもの、貴方との婚約に対して欠片も価値を感じていないからに決まってるじゃない。縋りついて再考を乞うとでも思っていたのかしら)
こんな状況でもあくまで自分が正しいという姿勢を崩さない男に胸の中で呆れつつも……私は渋々身体を途中で止めて振り返り、冷めた目でその顔を見つめた――。