【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 たまに毒液を飛ばしてくるものや、触れると生命力が吸い取られてしまうものとか危険なものもあるらしいけれど、それらはちゃんと分かりやすくまとめられ、人が近付かないようにされている。それに作業の時はしっかり長靴や手袋で防御はしているから全然大丈夫。彼も慣れない内はそういう区画を任せることはしないようだしね。

 指定された薬草を大体集め終わったので、私は小屋の中へ戻り、座って書き物をしているローエンさんに報告した。

「終わりました~。どこに置いておきましょうか?」
「もう終わったんですか!? すごいなぁ……慣れている僕だって倍くらい掛かるのですが」
「あはは、元々色々やってまして……後で一応確認してくださいね」

 彼はこちらが差し出した背負い籠をろくに確かめもせず部屋の隅に置いてしまう。その人の好さは少し心配になるくらいだ。

 そしてすごいすごいと手を叩いてほめてくれる彼には申し訳ないのだけれど、これくらいのことは私にとっては何でもない。セーウェルトにいたころは国中から傷病者が集まってくる大聖堂の半端なく広い薬草園を、日々緊急で足りなくなった薬を作るため走り回っていたのだから。
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