【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 というと、ランダルバート家の籍に入った今の私から言えば、義理の祖父に当たる人物だ。
 少し人となりに興味が湧く。

「どんな方だったんですか?」
「ベッカーさんとよく似ていましたよ。頑固で意地っ張りなお爺さんで……見ていて息苦しくなるくらい、仕事にとても真面目な方でした。でも大変色んなことを教わりましたね。貴重な薬草を無駄にするなとよく怒鳴られたのが最近のことのように思い出せます」
「今は、引退されてどちらかに?」
「いえ、お亡くなりになられました。老衰で眠るように逝かれたと」

 ごく自然に返事が返ったことからすると、悪い亡くなり方ではなかったのだろうか。こちらを咎める響きでもなかったし、人生にいつか終わりが来るのは自然な事。私もあまり気にせずに話を続ける。

「では彼の体質は、彼個人にだけ表れたものだったんですね」
「そのようです。魔族にもたらされる身体的変化は、ほとんどが遺伝しません。陛下と殿下の容姿の違いがいい例かも知れませんね」
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