【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 確かに、ベルケンド陛下の頭部には立派な二本の角が伸びているが、殿下は耳と瞳孔以外はいたって普通の男性に見える。本当に興味深い種族だと感心するばかりだ。

 ちなみに目の前の彼も、少年のような容姿をしているが実はこれで三十を越えているというのだから驚いてしまう。それが魔族としての特徴の一つなのか、単に彼が若々しいだけなのかはちょっと謎だけど。

 そんな彼は、初めて自分が薬草園に来た時の事を話してくれる。

「薬師見習いとして僕が初めてこの場所に来た時、お二人は酷い親子喧嘩をされていました。内容はあんまり覚えていませんが、ヨアヒムさんはベッカーさんをここの後継者にしようと思っていたようで、その辺りの話だったのではないかと思います。ベッカーさんが二人並んで、お互いを貶し合っているところを想像してください」
「あぁ~……」

 なるほどなるほど、それは五月蠅そうである。きっと「#####!」とか、「$$$$$!」とかいう例のスラングが二人の間で飛び交うのだろう。
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