【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

「彼らに事情を説明するのがまた大変で。その日はろくに話も聞いてもらえずに追い返されてまた翌日。機嫌の悪いヨアヒムさんに小一時間ほど説明して、やっとこの場所で働くことを許してもらったんです」
「大変でしたねぇ」
「でも、僕にとっては憧れの職場でしたので……」

　嬉しそうに語るローエンさん。結局その後日々怒られながらも根気強く働くうちにベッカーとも打ち解け、ローエンさんは着実に薬師としての経験を積んでいったらしい。

　その後ベッカーがここを引き継ぐことは無く、結局宮廷医師として就任してしまった。そのためヨアヒムさんはローエンさんに薬草園の管理を任せることを決心したらしい。

「どうしてベッカーは薬師にならなかったんですかね。あっ、もしかして重たいものを持つのが嫌いだったんじゃないですか？」

　いかにも体力仕事が苦手そうなベッカーのことだ。草木の鉢植えや土嚢なんかは結構重たいし、土を掘るのも力がいる。そんな作業を嫌ったのではないか……。そんな私の指摘に少しだけローエンさんは顔を曇らせる。