【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「え? いえ、全然知りませんけど」
「国によって違うが、本来あのぺらっぺらの葉っぱ一枚でジュデット金貨千枚はくだらない」
「せんっ!?」

 私は腰を浮かしつつ、両手で口を抑えた。
 ジュデット金貨千枚……あの時殿下に渡した金装飾のブレスレットが百個は買えてしまう。この国では小さな家位なら持ててしまう金額だ。
 びっくりした私に、プリシラ院長は皮肉げに言う。

「陽炎草は焦熱病の特効薬となるだけではなく、少量を他の薬に混ぜるだけで大きく効能を増加させるからね。どの国も研究対象として大きく欲しているし、各国の王国貴族も喉から手が出るほど欲しがってる。ローエンの坊やとあんたが育ててるあの一株だけで、上手く交渉すれば城の一軒くらいは買えちまうかもね」
「で、でも……あれは聖女の力でないと育てられないですから」
「まだあんたは、事の重要性が分かってないようだね」

 彼女の鋭い目がこちらを貫くように見て、私は口を閉じる。
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