【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「恐ろしい偶然もあったもんさね。たまたま殿下が助けるために連れて来たセーウェルト人が聖女で、本来なら門外不出の陽炎草の種を持ち歩いてた。そんで、期間限定とはいえ、この国の王城で陽炎草の生育を成功させちまった。もしこれが誰かに知られればどうなる?」
「……それは」
「間違いなくあんたは国内外問わずいろんな人間から身柄を狙われるだろうよ。幸い、その道具がある限りセーウェルト人だってことはバレやしないだろうが……王宮もあれで全部が一枚岩ってわけじゃないからね」

 きっと私の与り知らないところで皆には大きく気を使わせていたのだろう。
 その言葉はいかに自分が立場を弁えていなかったのかを思い知らせて、少しばかり胸が堪えた。

「すみません、軽率でした」
「ああ、こうやってほいほい出歩いてることもね、気を付けな。ったく、脅すつもりはないんだけどね。ローエンにしろベッカーにしろ、あんたの周りにいる奴らは揃って能天気だから、自分の身は自分で守らなきゃ駄目だよ」
「ご、ご忠告ありがとうございます」

 確かに、私を襲おうとした盗賊のように、出会う人全員が善人である保証はない。そして私の身柄は人質としても、ジュデットを糾弾する材料としても機能し得る。
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