【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 おそらく、野盗というやつだ。私は考えが甘かったことを悟る。
 街道筋なら人の行き交いも多く、なにかあっても誰かが助けてくれるだろうと踏んでいたのだが、今、周りには人っ子ひとりいない。

「大人しくするんだなぁ。せっかくの別嬪に傷をつけたくはねぇからよぉ」

 目の前の男が野盗たちのリーダーなのか、指示を出すと包囲が狭められた。
 こんな奴らに別嬪とか言われてもまったく嬉しくない。
 手のひらに気持ちの悪い汗が滲むだけだ。

 どうしよう、一か八か抵抗するしかないか……。
 私が腰のポシェットから取り出したのはひとつの小瓶だ。
 護身用として用意しておいたものだが、正直複数名を無力化できるほどではない。

 だが、ここで何もしなければ捕まえられて、私の人生お先真っ暗。
 じりじりと近づいてくる男たちに息を詰め、行動に移ろうとしたその時。
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