【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 屋上の四分の一ほどのスペースは壁で囲まれており、院長は一本の鍵を取り出すと扉を開け、その中へと入る。

 そこには土があった。床全体を覆う小さな畑が、吹き抜けになった上部から日光に照らされている。天井は無かった。

「もうこんな日は来ないと諦めてたんだがねぇ」

 その端に一つ据えられたベンチに、院長は腰を下ろすとこちらを招いた。定期的に掃除してあるのか、特に汚れてはいない。

「少し、老人の昔話に付き合ってもらおうかい」
「……ええ」

 それから、彼女は白肌病にまつわる話と、ベッカーがどうして宮廷医師になったのかを聞かせてくれた……。
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