【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく


 ――まず、《白肌病》っていうのはね、魔族固有の何十万人にひとりという確率で発生する症状なんだ。感染性は無く、原因は未だ不明。進行性の病で発症後、身体全体の色素が抜けるように薄くなり、数年を掛けてゆっくりと真っ白に変わってゆくのさ。

 でもそれだけじゃあない。問題となるのは強い倦怠感と身体能力の低下。それにより気鬱を感じ、寝たきりになる患者も多い。

 その治療を行う為、ベッカーがこの医院に訪れたのは、あんたなんかはまだ生まれてもいない今からは遠い昔のことになる。当時から、白肌病は不治の病とされ、この病院にも何人もの子供たちが預けられていた。その中の一人にベッカーの坊主もいたのさ……。

 今と変わらずクソ生意気な喋り方しやがってさ。
 あたしゃ何度その言葉遣いを直せと注意したことか。いけ好かないガキだったよ、まったく。

 あたしがあいつの面倒を見てやってたのは担当の医師であったこともそうだが、ヨアヒムのジイさんと腐れ縁だったってのが大きかったね。薬学教諭をしていたあの人に、医学生時代大分世話になったから、私情を挟むのもなんだができる限りなんとかしてやりたかったのさ。
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