【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 だが、ここジュデット一番の大病院でも、白肌病に対しての治療なんて名ばかりで、せいぜいが進行を僅かに抑えるくらいしか出来やしない。

 子供の頃は特に気を付けてやらないといけなかった。ちょっとした風邪なんかが命取りでさ。大きな病に罹っちまうと、すぐにどうしようもなくなっちまう。せいぜい、隔離して少しでも健康状態を整えてやるくらいしかないんだ。

 そうまでして永らえても、大人になって長く生きられる奴はほとんどいない。しかしベッカーはその中でも貪欲っていうのかね……先を見据えてた。自分の病気をいつか自分で直してやろう、そんな気概があいつにはあったのさ。

 あいつは周りの自分と同年代の子供と、よく話してたよ。絶対にこの病気を自分たちの手で克服してやろうってね。大人たちが出来なかったことをやってやると。生意気だが、不思議と見どころの有る奴だった。

 その内あいつは、努力の甲斐あって目標としていた医師となった。
 だが年月は残酷だったね。時間が過ぎる度に、あいつは自分が他の魔族と違うということを思い知らされちまった。ベッカーが生まれ持つ魔族としての特性――長命であることが、あいつだけを白肌病から救ったのさ。
< 223 / 471 >

この作品をシェア

pagetop