【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

「――本当、つまんなさ過ぎて笑うしか無い話さ」

 そう語りを締めくくると、プリシラさんは足を組みなおし、後ろにやった腕に頭を預けた。

「新薬を作りたいってのは、それでさ。あたしもこんなお荷物後生大事に墓まで抱えていきたくないし。ただ、それだけなのさ」

 一人の医師として、長い道のりを歩んできたそんなプリシラさんの目には、今も過去の姿が映っているのだろうか。一縷の望みを手に入ることの無い薬草に託していたこの人も、ベッカーもまた……セーウェルトとジュデットが手を結ぶ日を待ちわびていたのだ。

 彼女はゆっくりとこちらを振り向くと、苦笑をして言う。

「な、頼むよ。決してあんたのことを他人に口外しないし、陽炎草の管理もあんたとあたしだけでやる。だから、ちょっとだけ力を貸しとくれよ。余命いくばくもない婆あへの冥途の土産だと思ってさ」
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