【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 古い時代の遺物をひとしきり堪能した後、私は殿下と共にそこを離れる。妙に後ろ髪を引かれるような、印象深い施設だった。

 その後も、新しい発見に目を輝かせながら殿下との森の探検は続く。たまに野生動物の姿も見かけたり、食用の果実をその場でもいで食べたり……なんだか子供の頃に戻ったような楽しい時間を過ごせた。

 そこそこいい時間が経って歩き疲れてきた頃、少し開けた場所に出た私たちは、ここで昼食をとることに決めた。傍には花畑、右も左も木が生い茂るこんな自然の中で食事をできる機会なんてなかなかない。

「それじゃ、頂こうか」
「はい!」

 大きなランチシートを広げ、ミーヤとメイアが用意してくれた、王宮のシェフ手製のサンドイッチをふたり並んでいただく。周りの景色と空気が違うだけで、こんなにも食事が美味しくなるなんて!

「ん~、格別ですね!」
「本当にね。いつも堅苦しい食事ばかりだから、久しぶりに肩の力が抜けたよ」
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