【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「勘違いしないで欲しいのは、決して別に仲違いしてるわけじゃないんだ。僕は僕なりに家族の事を大切に思ってる。だから、この事で君に余計な心配を掛けたくはないな」

 触れてくれるな、といわんばかりの柔らかい拒絶に、私はどうしたものかと思い、殿下と同じようにその場に寝転んだ。

 シート越しに柔らかい草の感触が背中に当たり、意外と気持ちがよい。大聖堂にあった仮眠用のベッドよりかは寝心地が良さそうである。

 隣りには一人分の距離を空けて殿下がいるけれど、何となく今は気恥ずかしいとかそういう気持ちは抱いていない。自然の中だから気分が落ち着いているのだろうか。

「私が、妹の方だったらミーミル様の気持ちももっと分かったかも知れないですが……何となく、殿下にもっと構って欲しいんじゃないかなと思ったんです。彼女は」
「どうしてそう思うの?」
「なんでだろう……うんと昔、まだ小さかった頃のリリカが、妹がそんな感じだったから、でしょうか……。嫌いって言うくせに、いつも纏わりついてこっちの真似や邪魔ばかりして。でも何時しかそんなのもなくなって、話すことすらなくなってしまった……」
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