【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 すると、周りから数名の男たちがわらわらと出現した。
 ぱっと見ではどの国の出身か分かるような装備は付けていない。
 だが、その言葉に特徴があった。

「おい、声がしたのはこの辺りか?」
「周囲を徹底的に探せ! 王太子は居るかわからんが、女はいる! 交渉に使えるぞ!」
「女はセーウェルト人だった! おそらく本国からの連絡にあった、姿を消した聖女に違いない! 探せ!」
(……私が聖女だと知っている? しかもこの喋り方……)

 息を潜め彼らを観察していた私は、ぐっと息を呑み一つの失敗を悟る。魔族の姿に変身できる腕輪を外しておいたのが仇となって、私の正体がバレてしまっている。

 けれどそれは同時に私に奴らの出身を知らせた。共通語でやや分かり辛く、顔も隠してはいるが、彼らの言葉の発音は特徴があるセーウェルト訛り。ここまでくればセーウェルト王国に属するものとして間違いないだろう。
 
 ふと私がこちらに居ることをどうやって知ったのか気になったが、今はそれを気にしてはいられない。
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