【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 男たちが動かなくなったことを確認しても、私はしばらくそのまましゃがみ込んだままでいた。背中から冷たい汗が流れ、夏場だというのに寒気すら感じる。そこで、後方で土を踏みしめる音がして身を竦めた。

(殿下が……戻って来た?)
「女、ここに隠れていたか!」
「きゃっ!?」

 どん、と背中を突き飛ばされ私は地面に倒れ込む。
 見あげると、一人の敵兵が血走った瞳でこちらを見下ろしている。
 どうやら別行動していた仲間がいたらしく、絶体絶命……!

「えらく派手にやってくれたな、流石は元大聖女といったところか。しかしこれで、お前を人質にして王太子をおびき寄せることができる!」

 逃れようとした私の手を敵ががっちりつかむ。短剣は使うつもりがなかったから荷物の中だ。まずい……。

「わ、私なんかを人質にしたって殿下は戻って来ません!」
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