【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 旅装束で身を包み目立たないようにしているが、世にも稀なくらいの美青年だ。
 首元にかかる豊かな黒髪に褐色の滑らかな肌がどことなく妖しい雰囲気を醸している。

 彼はフードの奥から覗いたエメラルド色の目を鋭く細め、すぐさま野盗のリーダーに切りかかった。何度か打ち合うが、瞬く間に青年はリーダーを追い詰めていく。この人、物凄く強い……!

 状況が好転し、神様に感謝したい気持ちで一杯になる私。 
 だが、成り行きを見守るその目は、ふとリーダーの表情に違和感を感じ取る。
 ちらちらと右手側をうかがっているその視線を追い、私は目を見開く。

 奥の木陰。
 ひとりの男が立ち上がって弓をこちらに向けている……伏兵だ。
 もう矢は引き絞られ、放たれる寸前。

 伏兵の口が小さく動く。警告する間もなかった。

『死ねっ!』
「だめっ!」
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