【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「エルシア……」
気配もなく歩み寄り、投擲した剣を兵士の背中から抜いたのは、まさしく殿下その人だった。彼はすぐに私を縄から解放してくれる。
剣が貫通していたのか、血を噴き出して倒れている兵士の身体に、私は慌てて聖女の力を使う。命を取り留められるかはわからないが……反射的に治療を始めた私を、殿下は黙って見ていた。
そしてそれが終わった後、ようやく私は殿下の方に顔を向ける。
「で、殿下、ご無事でしたか……」
無事だった――その安堵が私の胸を包み込む。
殿下の姿にほっとして立ち上がったはいいが、私は今の自分の姿を思い出し、両腕で体を抱えた。なにせ、自分の着ていたドレスを罠に使ったおかげで、薄いシュミーズしか纏っておらず、足は垂れた血で汚れている。それを見た殿下はすぐに自分が纏っていたマントの留め具を外すと私に被せ、裂いた絹のハンカチを包帯代わりに太腿に巻き付けた。
気配もなく歩み寄り、投擲した剣を兵士の背中から抜いたのは、まさしく殿下その人だった。彼はすぐに私を縄から解放してくれる。
剣が貫通していたのか、血を噴き出して倒れている兵士の身体に、私は慌てて聖女の力を使う。命を取り留められるかはわからないが……反射的に治療を始めた私を、殿下は黙って見ていた。
そしてそれが終わった後、ようやく私は殿下の方に顔を向ける。
「で、殿下、ご無事でしたか……」
無事だった――その安堵が私の胸を包み込む。
殿下の姿にほっとして立ち上がったはいいが、私は今の自分の姿を思い出し、両腕で体を抱えた。なにせ、自分の着ていたドレスを罠に使ったおかげで、薄いシュミーズしか纏っておらず、足は垂れた血で汚れている。それを見た殿下はすぐに自分が纏っていたマントの留め具を外すと私に被せ、裂いた絹のハンカチを包帯代わりに太腿に巻き付けた。