【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「す、すみません……」

 その紳士的な行為に礼を言おうとした私。だが殿下はマントの襟元を掴むとぐっと引き寄せ、間近で私を強く睨みつけた。

「どうしてあのまま隠れていなかった?」

 鋭い殿下の咎めが、私を大きく動揺させた。
 彼から、こんな気持ちが私に向けられたのは初めてだ。

 いつもの殿下とは似ても似つかない、厳しい怒り――。

「で、殿下の事が心配になって……」
「それが余計だったと言っているんだ。あのくらいの人数なら私は一人で切り抜けられた。奴らを誘導しながら護衛たちを呼びに行き、事を収めた後隠れていた君を回収する算段だった」

 移動中に異変に気付き、すぐに戻って来ると案の定、倒れた兵士たちと私を見つけたと彼は言う。
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