【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「そうだな、お前には話しておくか」

 話が噛み合わず混乱する私に、ベッカーは静かな声で殿下の昔の話をしてくれた。



 ――まだクリスフェルト殿下が十と二つくらいの少年だった頃だ。
 彼は幼いミーミル様をとても可愛がっており、色んな場所に連れ回していた。
 
 その頃もジュデットは平和で、ベルケンド国王陛下の統治のもとに治世も安定しており、誰もがこのまま殿下たちが何の障害もなくすくすくと育ち、国を立派に引き継いでいくのだと毛筋ほども疑っておらなんだ。

 しかしある日、凶刃が殿下たちを襲った。
 不穏分子は確かに国内に存在し、まだ幼かった殿下たちを狙っていたのだ。
 
『き、貴様ら何者だっ! 誰か、殿下たちをお助け……うぐっ!』
『王太子と王女は連れて行け。護衛たちはここで始末しろ!』
『や、やめろぉ――っ!!』
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