【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「刺客に襲われた時……本当に身も凍る思いだったんだ。私は安全な場所に隠れていて欲しいと言ったのに……。エルシアがもし危険な目に遭ったらと思うと、もし彼女の顔が二度と見れなくなったらと思うと昔を思い出して、私はただ恐ろしかった」

 殿下には、大事なものほど遠ざけようとする癖がある。
 幼き日に受けた傷の代償に、殿下は家族と自分を切り離した。

 それでは根本的な解決になっていない事を知りつつも、彼はそうして王太子である責任を全うしてきた。他に世継ぎは居ないのだ。そうせざるを得なかった。

 だがセーウェルト人であるエルシアと出会い、彼は興味を持ち、少しずつ距離を近づけていった。そうしてまた同じ恐怖に立ち会ってしまった。

 しかし、今度は以前とは違いがある。殿下はエルシアを傍に置きたがっている。
 苦しみながらも、今度は違う答えを見つけようとしているのが分かる。
  
 だから我輩は彼の肩に手を添えて諭した。
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