【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
一人の医師として、そしてジュデットの国民の一人として我輩もそんな姿を放っておけず、話しかけては見たものの、当然大した反応が返って来るはずもない。好きな食事や玩具などにも興味を示さず、一日中座ったままの彼に、我輩は根気強く付き合うしかないのだと、休みごとに彼に会いに行った。
といっても何か別段面白い話などをしてやれる訳でもなく、いくつかの書物を彼の傍らで読んでやっていただけだ。五日、十日と日が経っても大した反応もなかった。それでも、少しでも傷ついた心の慰めになればよいと続けていたある日、不意に彼が話しかけて来たのだ。
『ベッカー……。ずっと考えてみたけど、僕には王たる者の資質がないみたいだ』
『ふむ。どういう意味です?』
彼が我輩の名を知っていたことにも驚きつつ、傍に寄って話を聞く。
『僕は臆病なんだ。妹を失いかけただけでこんなにも心が弱くなってしまう。王様は、強くなければ。身内の一人や二人の命で動揺していては、きっと務まらないだろう? でも、僕には代わりが居ない。そう成るべく生まれてしまったんだ。ねえ、僕は一体どうすればこの国の王にふさわしい者になれる?』
といっても何か別段面白い話などをしてやれる訳でもなく、いくつかの書物を彼の傍らで読んでやっていただけだ。五日、十日と日が経っても大した反応もなかった。それでも、少しでも傷ついた心の慰めになればよいと続けていたある日、不意に彼が話しかけて来たのだ。
『ベッカー……。ずっと考えてみたけど、僕には王たる者の資質がないみたいだ』
『ふむ。どういう意味です?』
彼が我輩の名を知っていたことにも驚きつつ、傍に寄って話を聞く。
『僕は臆病なんだ。妹を失いかけただけでこんなにも心が弱くなってしまう。王様は、強くなければ。身内の一人や二人の命で動揺していては、きっと務まらないだろう? でも、僕には代わりが居ない。そう成るべく生まれてしまったんだ。ねえ、僕は一体どうすればこの国の王にふさわしい者になれる?』