【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
でも、殿下なら分かってくれるとそう思った。
今、殿下の腕には私が送ったブレスレットがある。あんなことがあった後なのに。
だから信じて待とう――そう決めた私に殿下はしばらく固まった後、その表情をふと緩め、言った。
「済まなかった……いや、これはもう言ったんだったな。ありがとうエルシア。私はいつしか思い上がっていたんだ。自分が強く、正しくなって人を導けば、誰にも辛い思いをさせずに済むなどと。でも、君たちには君たちの願いがあって、どうしても譲れない想いもあるものな……」
「完璧な人なんて……完璧な答えなんて、無いと思うんです。誰かにとって正しいことが、他の誰かにとって受け入れられないこともあると思うから。だから私たちは、ちゃんと話し合って分かり合う努力をしないといけないんじゃないでしょうか。大切な人が関わることなら、尚更」
「うん……そうだな」
ここへ来て、少しずつ私にも分かっていった。殿下は決して強い人ではないのだ。だからこそ必要とした……本来の彼を隠すための仮初の自分を。
もしかすると、次期国王になる立場としては不適格の烙印を押されてしまうようなそんな弱い心を、彼は心に押し込めたまま消えてしまう事を願っていたのかも知れない。
今、殿下の腕には私が送ったブレスレットがある。あんなことがあった後なのに。
だから信じて待とう――そう決めた私に殿下はしばらく固まった後、その表情をふと緩め、言った。
「済まなかった……いや、これはもう言ったんだったな。ありがとうエルシア。私はいつしか思い上がっていたんだ。自分が強く、正しくなって人を導けば、誰にも辛い思いをさせずに済むなどと。でも、君たちには君たちの願いがあって、どうしても譲れない想いもあるものな……」
「完璧な人なんて……完璧な答えなんて、無いと思うんです。誰かにとって正しいことが、他の誰かにとって受け入れられないこともあると思うから。だから私たちは、ちゃんと話し合って分かり合う努力をしないといけないんじゃないでしょうか。大切な人が関わることなら、尚更」
「うん……そうだな」
ここへ来て、少しずつ私にも分かっていった。殿下は決して強い人ではないのだ。だからこそ必要とした……本来の彼を隠すための仮初の自分を。
もしかすると、次期国王になる立場としては不適格の烙印を押されてしまうようなそんな弱い心を、彼は心に押し込めたまま消えてしまう事を願っていたのかも知れない。