【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「こほん、それ位でいいんじゃないか?」

 少し仏頂面になった殿下がこちらを見ており、私たちはゆっくりと身体を離す。

「……そうですね。今生の別れでもあるまいし」
「ちっ、父と娘の関係に口を挟むものではありませんぞ、殿下」
「そんなのは義理の話だろう! さあ、離れた離れた」

 間に殿下が入ったことで強引に距離を取らされた私たちは苦笑する。そこでミーミル様が殿下に意地悪を言った。

「お兄様恰好悪~い。嫉妬する男は嫌われるのよ?」
「やめないかミーミル。そういうませた知識はどこから仕入れて来るんだ……」

 愛する妹に糾弾された殿下はげんなりし、そんな彼の姿に私はくすくす忍び笑いを漏らす。

 魔族だろうと女性にとって恋愛事は最優先事項の一つ。誰かの話を小耳にはさんでもまったくおかしくはない。宮廷ですら、そうした開放的なところがあるのがこの国のいいところなのだから。おかげで私も息苦しさを感じることなく羽を伸ばせたんだ。
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